さうざうしくない

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図書室は、夏場と冬場に利用者が増える。 なぜって…まぁ、本が、目当てではないってことで。うん。私はよく分かる。 先輩にとっては、そーゆー奴は、できれば排除したいみたいで。 「来るなら来るで、喋ってないで、周りを見渡せばいいんだ」 ぶつくさ怒っている。 「周り見たら、何かあります?」 …鬼の形相で睨まれた。 えっと。よほどアホな質問だったらしい。そこだけは分かる。 「周りを見たら、本があるんじゃないかな?」 カウンターに本を二冊置いて、爽やかに言うのは、暖房に惹かれて来たメンバーとは違う、常連の顔だ。 その言葉の意味を理解しようと、数秒考えたところ、カチンと固まっていたらしい。 もう一度声をかけられた。 「藤原さん、貸し出しで」 「あ、ごめんなさい!」 え、とか、あ、とかいう声がそれぞれの口から漏れる。 この人、私の名前覚えているんだーー。 とはいえ、いつまでもぽわっとしているわけではない。馴れたもので、頭をつかわなくても身体はさらりとバーコードを読み込みパソコン処理をし、防犯システムもオフにする。 「2冊の貸し出しですね、どうぞー」
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