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人通りの少ない寂れた通りにある、古びたビルに掛かった、錆びた看板。
『近江超常現象調査事務所』
その入り口を、頭の高い位置で束ねた白に近い金髪を揺らして、一人の女が買い物袋を手に潜った。
階段下にある郵便受けを覗いて、ダイレクトメールの類を取った女 ―――― 美羽は、一つの封筒に目を留め、眉を寄せる。
肩を竦めて、足取りも軽く階段を上って行った。
午後ののんびりした空気の中、狭いなりに快適な事務所内では、二人と一匹がだらだらとソファに伸びていた。
事務所の長で陰陽師である近江凪子は、一人掛けのソファに埋もれて雑誌を眺め、三人掛けのソファには長い脚を持て余すように身体を投げ出した彼女の使役、鬼の朱雀が、文庫本を広げている。
そして彼の脇腹辺りには、麒麟の陸王が猫の姿で丸くなっていた。
「凪子サン、郵便が来てましたよ。すっごく不穏な感じの」
買い物から帰ってきた美羽の声に、凪子は顔だけを向けた。
「なに、不穏って」
その問いに、美羽が手にした封筒を掲げて見せる。
それを認めた途端、凪子は眉を顰めた。
「やだ不吉」
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