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「―――――― 来た」  美羽は「待ちくたびれたよ」と呟きながら屋根に立つ。  左手のひらを突き出し、右からぐるっと円形に動かすと、それを追うように宙に光の方陣が描かれた。  八風神社から迷うことなくまっすぐに向かってくる霊力の塊に、美羽は目を細める。 「鬼さん、こちら」  美羽の声に呼応するように、美羽の眼前の方陣が花が開くように大きく広がった。  ぼんやりと朧げな輪郭しか持たなかったものが、美羽の姿を認めて獣の形を取る。  牙を剥いて、声なき咆哮を上げた。 「手の鳴る方へ」  口角を上げて微笑み、両手を打ち合わせる。  威嚇をしようと口を開いた獣の目が、驚いたように見開かれ、その場に留まろうとするが見えない何かに引き摺られ、美羽の方陣に吸い込まれた。  方陣が渦を巻いて小さくなり、光の粒を撒いて霧散する。 「完了、っと」  満足げに呟いて、美羽は大きく伸びをすると空き地がある方を見やった。 「あっちには陸王も行ってるから大丈夫でしょ。一足先に帰ってようかな。凪子サン、お腹空かせて帰ってくるかもしれないし」     
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