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一人納得したように頷いて、美羽は足もとに爪先で円を描き、ぱん、と一つ柏手を打つ。蝋燭の火を消す様に、その姿が消え、方陣も何度か明滅を繰り返して、ふつりと失せた。
どん、と突き上げるような衝撃が襲う。
だがそれは実際に地が揺れたわけではなく、空き地の中央に描かれた方陣からエネルギーの塊が放出された際の大気の振動。
「根性あるのね。霊媒の仕事の後にこれだけの霊力を解放するなんて」
ぱちぱちと手を叩いて褒める凪子を、方陣から吐き出され地に立った獣が睨めつける。
そこへ、遥か高みから矢のように飛来する何か。
気配を察し、飛び退いた獣の鼻先を掠め地を穿ったのは、麒麟。
舞い上がった土煙の中で挑発するように蹄で土を掻く。
「陸王、官房長官は?」
「十分ほど前に帰った」
凪子の問いに人の姿を取って答えると、怜悧な瞳を獣に向けた。
「尾は三本、という話では?」
目の先で苛立たしげに揺れる尾は一本。
柵から腰を上げ、凪子は肩を竦める。
「前の時より二回りほど小さいわ。でも、かなり霊力を圧縮してあるみたい。その分、フォルムをコンパクトにしたんじゃないかしら」
頭を低くし、唸りを上げ続ける獣は、ずっと朱雀を睨めつけている。凪子はジーンズのポケットに手を突っ込んで、首を傾げた。
「こないだのこと、根に持ってるみたいよ、朱雀」
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