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 朱雀は喉笛に喰らいつこうとする牙を上に跳んで避け、獣の額に片足で着地する。そのまま下へ向けて霊力を放出すると、負荷に負けて獣の頭が地に臥した。  頭を足蹴にされているのが気に入らないのか、獣は低く唸って身を起こそうとするが、その頭を朱雀の脚から放出される霊力の杭で地面に固定され、顎を僅かに上げることすら叶わない。  ならば、と全ての霊力を尾に集め、朱雀目がけて打ち振る。一歩下がって躱そうとした直前、尾を包む霊力の棘が伸び上がり、朱雀は思わず目を瞠った。  咄嗟に両腕を霊力で包み、ガードする。  ぶつかり合った霊力が甲高い音を発し、力任せの一撃に、受け止めた朱雀の身体が僅かにバランスを崩した。  奥歯を噛みしめて踏み留まったが、その一瞬生まれた隙を見逃さず、獣は身体を捻って頭を振り、朱雀の拘束から逃れる。  大きく後方に跳んで片膝をついた朱雀を睨み据えて、威嚇するように吠えた。  それを見つめ、凪子がぽつりと呟く。 「――――― タイムアウト」  その声と同時に、朱雀に飛び掛かろうとした獣に異変が起こった。  びくりと身体を震わせて動きを止め、戸惑うように忙しなく眼球を巡らせたと思うと、その姿が薄れて消えてゆく。悔しげに朱雀を睨み、やがて跡形もなく消えてしまうのを見届けて、朱雀が立ち上がった。     
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