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「術者が限界か。あれだけ配分を考えずに浪費すれば当然だろうな」
「獣の方が暴走しちゃったみたいね」
ぱん、と膝を払って言った朱雀に、凪子は眉を寄せて笑う。
「随分と恨みを買っていたようだが、何をしたんだ、お前」
陸王の問いに、斜め上に視線を投げた朱雀は、以前の一戦を思い出した。
「……特に恨まれる覚えはないけどな。強いて言うなら、首を斬り落としたことくらいか」
「十分だろう」
陸王が口の端だけで呆れたように笑う。
「取り敢えず、あの獣の主人は隠し巫女ってことで確定みたいね。だからといって、今から神社に乗り込むわけにもいかないし、私たちも帰りましょうか」
「美羽は?」
「先に帰ったようだぞ。気配がない」
「いいじゃない。たまには夜のお散歩も。ホラ、今日は月がない分、星がたくさん見えるわよ」
笑って空を指した凪子につられるように、男二人も天を見上げる。
住宅街。それも夜中となれば、地上に明かりは数えるほどしかなく、他の光に邪魔されないせいか、見上げた先にはまさに満天の星。
「天は変わらないな」
目を細めた陸王がひそりと呟くのに、凪子はふと目を向けた。
「そうだな」
反対側から朱雀が同意し、今度はそちらを見やる。
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