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 テーブルに映った自分と目を合わせて独り言のように言うと、その視界の端で朱雀の手がことん、とカップを置いた。 「それは手にした権力を他の奴に渡すのが惜しいからだ」  美羽は目だけを上げて朱雀を見る。  ソファに背を預け脚を組んだ朱雀の目は、酷く冷たく澄んでいた。 「人間というのは、いつの時代も欲望に忠実だ。特に権力者はその欲を叶える力を持っている分、質が悪い。世界の何もかもを自分のものにしたくなる。たとえそれがどんなに小さくとも、世界の一つを手に入れれば、今度は手放したくない。いかに長く自分がそこに君臨するかを考える。だから、不死が欲しくなる」  やや抑えた声音で淡々と語る朱雀を、美羽は黙ったまま見返す。 「欲しい、という想いが極まると、人間は信じられないことをする。人魚の肉を食えば不死になるなら、不死の俺の血でも同じだろう、と考えた奴がいて、そいつは俺の血を飲んだ」  薄く笑って朱雀が言うのに、美羽は思わず目を瞠って頬杖をついていた体を起こした。 「……飲んだ?」 「首を斬りつけて、血塗れになりながらな」  とん、と指先で頸動脈の辺りを示しながら口の端で笑う。  美羽は恐る恐る訊ねた。 「その人、どうなったの?」 「十年後に病で死んだ。――――― 俺の何代目かの主人だ」     
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