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嘲笑に似た笑みを口元に浮かべた朱雀を、複雑な表情で見つめた美羽は、言葉を探しながら口を開く。
「鬼を手に入れたから、何でもできるって思ったの?だから、不死になりたかったの?」
笑みを消した朱雀が首を傾げた。
「さあな。その家の最後の当主になりたかっただけかもしれない。そいつの世界は狭かったから」
静かな低い声で言って、朱雀は思い出したようにカップを取り上げる。けれど口は付けずに縁を親指で撫で、手の中で揺らしていた。
何か考えているようなその様子に、美羽は言葉を待つ。
しばらくして、手元のカップに目を落としたまま、独り言のような声音で朱雀が言った。
「……そんなに長く生きたところで、孤独を思い知るだけだ」
美羽の方は見ずに一口コーヒーを飲み下すと、カップを置いてソファに横になる。文庫本を広げた朱雀から、「もうおしまい」という空気を感じ取って、美羽はソファを立った。
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