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私は子供の手を引いて、夏祭りへと続く道を行く。
しだいに大きく揺らいでいく祭りばやし。
夕闇の中、提灯達の優しい光の群れが見えてくると、どこか懐かしいような夏闇の匂いが濃くなってきた。
ぬるま湯のような風も柔らかい。
やはり祭りは夏の醍醐味だと、私はしみじみとした。
キャッキャッと、子供が飛び跳ねながらはしゃいだので、私は笑った。
もうすぐ祭りが始まる。
と、そこで部長から電話が……、
「もしもし?」
《おいッ。オマエ、今日の昼にクライアントへ電話しとけって言ったヤツ。あれどうなってる? 先方は連絡受けてないってカンカンだぞッ》
「……………………」
どうしよう。忘れてた。
「……手遅れですかね?」
《手遅れだよッ》
そんな祭りの前の、……後の祭り。
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