こどものミカタ

2/2
前へ
/268ページ
次へ
虫の音ひとつもしなかった。だから、暗闇の中でその音はよく響いていた。 田舎の山奥。当然のことだが、日付も変わったこんな遅い時間帯に出歩く人などいない。 その生き物は無我夢中で食らいついていた。 人間の皮膚は思ったより硬く、引き裂くのにだいぶ時間はかかったものの、ようやく腸の一部分に辿り着いたようだった。 生き物は、長いあいだ満たされなかった飢えを満たすように、必死に人体を(むさぼ)っていった。
/268ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加