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そのとき、涙が流れた。
恵梨香が目覚めると、そこは寝室で、横では夢香がお腹を出して寝ていた。
時計を見ると、ちょうど6時。
もうそろそろ準備を始めないといけない。
恵梨香は顔についた水滴を拭い、娘に掛け布団をかけてやった。
"これからは3人で幸せな家族になろうな?"
ふとさっきの夢の内容がよぎる。
──そう、3人で……
少なくともあのとき、彼の言葉に嘘はなかったはずだった。本当に幸せになろうとしたし、そのために努力しようとしたはずで、恵梨香はそれを信じていた。
だが、いまある日常は、そのとき思い描いた日常とはまるで違っていた。
ふたたび時計を見ると、もう数分が経過しており、キリがないと感じた恵梨香は、それ以上考えるのをやめた。それより彼女は、短い朝の時間が惜しかった。
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