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玄関では膠着状態が続いていた。両者はドアに手をかけたまま固まり、どちらも口を開こうとはしなかった。しかし、このままでは埒があかないと判断した刑事は長いため息をついて、補足説明を始めた。 「この周辺の方にも、何人かお話聞いたんですけどね……みなさん口を揃えて言ってました、博之さんの姿をぱったり見なくなったって……彼がこの家に帰ってくるのは昼過ぎでしょ? だから、普段からいろいろな人が見かけてたらしいんですが……」 そして、すかさず悦子の顔を覗き込んだが、悦子は足元を見つめたままずっと黙り込んでいる。 「奥さん……」 刑事は呼びかけながら、必死に悦子の表情から読み取ろうとしていた。悦子の目はどこか曇っていて、迷っているようにも、怯えているようにも見えた。
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