パンク・オブ・ユーフォリア

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ほどなく静かな開閉音が聞こえ、これから飛び込む眼下の景色が見えてきた… 眼下は歓喜のざわめきで満たされていた。日の光を鈍く反射した掘っ立て小屋の集まりと砂が舞う荒れ果てた町並が広がる。イメージは紛争地帯、荒廃した世界ってところか? 騒がしさの正体はその中にある広場で蟻のように蠢く群衆だ。制服女子にメイド、露出が高いのもいれば、変身ヒロインもどき! 容姿は皆、共通の童顔、清楚に天然顔と多彩な女性像に加えて、 特撮に出てくるフルフェイスのヒーロー、ファンタジーの甲冑騎士に 黒いローブの魔法使い。今日は、巨大ロボットがいないのが救いといったところか・・・ 「欲望を物質的に変換し、持ち主の容姿や能力を爆発的に飛躍させる。」 そんな技術が、極東の電気街で提唱、実現された。欲望を脳内で感じる、それを体内に埋め込んだ「変換機」が感知し、体中に張り巡らしたカテーテルが各器官にエネルギーを送り続ける仕組み。 「ヒーローになりたい。」 「魔法少女になりたい。」 そんな願望を心に思い、それに酔うだけで実現する。性転換手術も、ロボット工学も、 難しい科学法廷式もミミズの這ったような古代呪文も必要なし。 今や「コスプレ」はキャラの真似をするのではなく、そのキャラになる事が出来る。 個々の抱く欲望が、現実世界に溢れだし、混じり合えば、どうなるか? 待っているのは、ごちゃ混ぜ混沌のパンク世界の始まり…そうして、 世界は壊れに壊れた…  自動操縦の輸送機はそろそろコースを帰路に変更するだろう。 俺はゴーグルをかけ、口元を布で覆う。降下の用意ができた。最後に流れた政府の放送を思い出す。
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