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翌日の仕事終わり頃にまた非通知の着信があった。
「単刀直入に申し上げます。そちらの会社をでたら左に進み二つ目の交差点に止まっている黒のレクサスがお待ちしていますのでお乗り下さい。」
いわれるがままに向かうと交差点のそばで止まっているレクサスを見つけ近づくと運転手が降りてきて後部座席を開けてくれた。そのまま乗り込むと電話の主と思われる女性が座っていた。
「檜山様、突然の電話で失礼しました。私のことは名前がないと不便だと思われますので便宜上 山本と及び下さい。話が終わった後同意頂いた場合のみ私たちのことをご説明申し上げます。」
いつのまにか進み始めた車の中で自称山本女史が話し始めた。
「私たちの所属する組織では30年以内にALSを克服することが可能となるでしょう。なのでそのとき奥様の病気も回復することになります。」
「30年後だって?そんなに先になって治ってもほとんど無意味じゃないか。そんなことを説明するためにこんな手の込んだことしたのか?あきれてものも言えないよ。」
「まだすべて説明は終わっておりません。当方といたしましてもお二人にお年を召して頂いては困るのです。」
「はぁ?何言ってるんだい。」
「凡そ30年、肉体は冷凍保存され治療法が確立後お目覚め頂く予定です。」
「コールドスリープということか?そんな技術、確立していないだろ。」
「いいえ、公表されていないだけで既に何例も冷凍後数年して甦った実績を当方では有しています。そして檜山様ご夫婦に今回お話させて頂いたのはお二人。特に奥様と檜山様の遺伝子が非常に稀有な形をしていること。そして奥様が一度ALSに罹患していることが重要なのです。全身が麻痺することを神経単位で記憶したあと治療されることが重要となります。」
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