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帰ると木綿子が何かメモしていた。
「ただいま、何かいているの?」
「幸ちゃんの好きな料理のレシピ。あたしが動けなくなってもだれかが作ってくれるように書き残しているの。でも残念なのはあたしが味見できないってこと。だから今のうちにたくさん作るから私の料理を覚えておいてね。」
「当たり前だよ、ずっと覚えているよ。」
「料理だけじゃないよ、あたしの表情もなくなっちゃうから写真をいっぱい撮ろう、それとビデオも撮っておいて私が動いてる姿や声も残しておくからね。」
「そうだね。でもどっかにいくわけではないんだから」
「近くにいるのに遠い場所になっちゃうんだよ、私からは近づけなくなるんだから、私から触れないし声もかけられない視界から消えても探すこともできなくなるんだよね。」
「でも今の私を忘れないでいて欲しい、あたし、わがままだから幸ちゃんが他の誰かを好きになるのは絶対に嫌だ。だから今のあたしを残しておくの。あなたが好きだと言ってくれたあたしの姿、あたしの料理、だから、、」
それから木綿子は声をだして泣き始めた。慰めのことばも励ましの言葉も浮かばずただ木綿子の肩を抱いていた。今日あった出来事を話しそうになったがぬか喜びさせるわけにもいかないのでもっと信憑性がでてから話そう。
そして僕も一緒になって泣いた。
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