7人が本棚に入れています
本棚に追加
「今すぐ家を出て、すぐに目の前の道路まで出るんだ。こちらが接触したことがやつらにばれた。説明している時間がない何も持たなくていいからすぐにだ。」
「ちょっとまってくれ、いったい何の、」
「とにかくすぐに出るんだ。奥さんのことを助けたいなら言うことを聞いてくれ。」
こちらの返答を待たずに電話は切れた。
まったく訳がわからない。木綿子が家にいたならば絶対に信じないであろうが、今この場にいない現実を見せ付けられるとだまされてると分かっていても他に選択肢なぞない。
「行くしかない。」
財布と携帯だけを握り締め玄関をでてエレベーターに向かった。
先ほどの電話の通りにするとしてもあまりにも無防備に出かけられないと思い。2階で降り、非常階段へ向かったところで何人かが階段を駆け上がっていくのが分かった。
咄嗟にドアの鍵を開けるフリをして階段に背を向けやり過ごしたところで、足音を忍ばせてゆっくり1階に下りる。駐車場に出たあたりで上から、乱暴にドアを開ける音と怒号が聞こえてきた。
「まだ近くにいるはずだ。さがせ。」
エレベーターホールにも何人かの男が待っているのが見えたのでわき目もふらずに走り出したところで気がついて、
「いたぞ、逃がすな。」
何人かの男が追いかけてくる。ジャージ姿に野球帽という服装で「こういうときは黒服にサングラスじゃないのか。」
など妙にのんきな想像をしてしまったが、人を追いかけたり、力仕事をするときはその格好のほうが楽であろう。
とにかく今は逃げること考えないといけない。
最初のコメントを投稿しよう!