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人通りの多い大通りに向かって駆け出すと1台白いセダンが急停止して助手席のドアが開いた。
「早く乗って、急いで。」
運転席から身を乗り出した男が叫んだ。信じていいものか迷ったが後ろから追ってくる連中よりはまだこちらのほうがまだ安全そうに思えた。
車に乗り込みドアを閉めると走り出した。
「あんたは一体誰だ。それに木綿子はどこに行ったんだ。」と聞いたが
「説明は後、今はとりあえずやつらから逃げないと。まず携帯の電源を切って。」
「なんで電源を、、」
「いいから早く」
幹線道路を明らかに制限速度を越えて走る車の中でまずシートベルトをはめながら言われたとおり携帯の電源をきり、隣の男を観察してみると、年齢は若く20代後半から30代の前半と言ったところで背は180cmに届くかどうか、痩せてはいるが華奢ではない。
先ほどの連中とは違ってスーツを着こなし眼鏡をかけている。良くも悪くも普通のサラリーマンにしか見えない。
途中で高速にのりしきりにルームミラーやバックミラーを見て追手の有無を確認している。飛ばしている割に恐怖心を感じないのは彼の運転技術からくるものであろう。
途中のサービスエリアに入り駐車スペースで黒のワンボックスの隣にとまると
「ここで車を乗り換えます。降りてください。」
隣のワンボックスのドアが開き向かい入れられた。
別の男が運転席に座っていて後部座席に先ほどサラリーマン風が座った。
「そろそろ説明してもらってもいいんじゃないでしょうか。」
説明を求めてると車が発進しまた高速の車の流れに紛れていった。先ほどの車もそうだがこの車もナビがついておらずしかもマニュアル車だ。最近ではあまり見ないし自分でも教習所以来運転したことがない。
「ナビを付けるとこちらの居場所がばれてしまいますからね。携帯も一緒ですたとえ位置情報をOFFにしていてもやつらが本気になればどこにいるか突き止められてしまうので。」
「西沢といいます。説明はもう少しお待ち下さい。まだ途中でもうひとり合流するので。」
それから西沢は口を閉ざしてしまった。行き先も教えられず車で逃亡、妻は行方不明。あまりの理不尽さに腹が立ってきたところ、高速を降りた車が路地でもう一人の男をピックアップした。
「太田、なんでお前が。」
助手席に乗り込んできたのは同じ職場の太田直樹だった。
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