夏の魔法

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汗でベットリと張り付いたシャツ。風を通さないスラックス。熱を閉じ込めるように閉められた首元のタイ。 「今日もあ・・・・ああぁ・・・」 あつい、と言い切るまでに暑さで声が途切れてしまう。 ジリジリと肌を刺す太陽光はまだまだ真夏本稼働中のようだ。 季節は夏。 夏と言えば、海、スイカ、肝試し!の三点セットを唱えていたあの遠かりし頃とは違い、夏バテ、外回り、生ビール!と、なんとも現実的なルセットが僕の日常となってしまっている。 「はぁ・・はぁ・・」 そんな炎天下の中僕といえば、紺色のスーツを身にまとい、息も絶え絶えに外回り業務に勤しんでいる。 黒ずんだコンクリートの温度が、革靴を透過してきたら最後、日陰か手近な喫茶店へと駆け込むのが外回りをする会社員共通の心得だろう。 携帯を見ると会社の上司からのメッセージがいくつか届いてた。 中身をみてげんなりする。いつものやつだ。 上司以外に誰とも連絡の取っていない携帯を乱暴にポケットへ突っ込んだ。 25歳になるが、パートナーと呼べる人は今はいない。
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