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「なら教えてやる!今年来るブーム。それは空前絶後の懐古ブームだ!」
「か、懐古ブーム?古い物を懐かしむと書くあれですか?」
「その通り!」
その質問を待ってましたとばかりに、営業部長は隣に置いてあった大きな箱状の物体からベールを引き剥がした。
「こいつは何を隠そう21世紀に実際に使用されていた洗濯機だ!」
「え?洗濯機?これがですか?」
今の洗濯機とあまりにも違いすぎる形状に社員の一人が驚嘆の声を上げる。
「そうだ。無骨なフォルムに必要最低限の機能。これが21世紀の美しさだ」
会議室のどよめきを物ともせず、部長は続けた。
「驚くのはまだ早い!この洗濯機の機能はさらに斬新だ!まず一つ目にはもちろん洗濯機能だ!これがなけりゃもはや洗濯機ではないからな。そして、もう一つは乾燥機能だ!繊維質の服に熱を加えながら回転を与える非常に古典的なやり方だがな・・・」
「ほ、ほかには・・・」
突然話を止めた部長に社員が尋ねる。
「無い!」
「え・・・?無い?」
「そう!無い!」
「ぶ、部長、流石に冗談が過ぎますよ。少なくとも壊れた時の自動修復機能は付いているでしょう?」
「無い!壊れたら壊れたままだ!」
「そ、それなら。持ち運びの用の圧縮機能はありますよね?」
「無い!この大きさを自力で運ぶのだ!」
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