3.少女と、真夜中に、二人で。

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半刻ほど掘っただろうか。   かつん。  鉄の先端がなにかに当たる音がした。  ふみの泥にまみれた手先が、焦燥を覚えたよう速度を増した。そんな風に思えた。余市もそれに呼応するように、円匙を操る。  やがて、そこから現れたもの。  長い年月を排気ガスに晒された建造物のように、土くれで白茶けたなにか。  それは、その全容がみえていくにつれ、それがなにであるかがわかっていった。 「……骨」  余市が思わず、口にする。  ふみはなにも言わなかった。  ただ人骨と思しきそれを、最後には手でもって掘り出して、愛おしそうに抱えた。  それは、二人分あった。  年月の中で土に還ってしまったのか、はっきりと形をとどめている部位は少ない。  少女が掘り返し、それを拾う指のその先で、大半はほろほろと崩れた。少女が愛おしそうに抱えたのは、そのうちの二人分の頭骨だった。 「それだけで、いいの?」 「うん」  答えながら、少女は余市の袖をくいと引っ張った。  頭蓋骨を抱え、象牙色の指先を、体にまとった乳白色を、鳶色に汚した少女に、余市は黙ってついていく。  気が付けばそこは、ふみの家であり、余市が最初に顔を出した廃屋だった。  ふみは余市にはなにも告げず、家の裏手に回ると、スコップを地面に刺し入れる。余市もそれを察して手伝った。二人してある程度土を除けた後に、ふみは頭骨を穴の底に安置すると、今度は土をかぶせて行く。  やがて、誰かしらの頭だったものは、再び土の奥底に消えた。  小さくふくれあがった土に向かって、ふみは目を閉じると、しばらくの間その小さな手を合わせた。  やがて、ゆっくりと瞳を開けると。 「ついてきて」  ただ一言、そう言った。
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