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4.少女と、真実と。
少女が行きついた先は、先ほどの土蔵だった。
村落に見合わぬ、威圧感を覚えさせる程の大きさのそれは、月の灯りを鋭く跳ね返すほどに白く、どこか神々しささえ感じさせた。
少女の足先は、村落の家々に飛び込んだ時と同様の逡巡のなさで、土蔵の中へ向く。しかしその足取りは、それらの軽々しさとは全くの別物と言ってよかった。
扉に鍵はかかっていなかった。
扉を押した時、余市は物量的な重さとはまた別の、奇妙な重みを感じた。扉自体には錆びすら見当たらず、立てつけの悪さなどまるでなかったが、聞くはずもない、ぎい、という音すら生々しく聞こえてきそうな、何とも言えない重みだった。
中は一見普通の土蔵だった。
鋤、鍬などの雑器や、なにを記録しているかわからない書物など、雑多な物々が鎮座していて、その中を二人は歩いた。
やがて、そこを抜けると、やや広めの空間に出た。
そこは村落の家々の中によく似ていた。
畳があり、その上には布団が敷かれていて、桐の箪笥が置かれ、奥にある襖の先にはまだ部屋があるようだった。やや高い位置にある格子窓からは月明かりが差し込んでいる。
家々と違う点があるとすれば、そこが鉄格子で仕切られていることだった。
「むかしね」
少女が、静かに語りかけた。
「むかし、この村でびょうきがはやったの」
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