4.少女と、真実と。

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その病は、遅行性だった。  一人が風邪のような症状を訴え、やがて命を落とした。  連なって並べた牌が、徐々に速度をつけ、他の牌を巻き込んでたおれるように、一人、また一人と同じように命を落とした。 「どうしたらいい」  村落の寄合で、村長は皆に相談した。 「都の薬師にすがるほど、うちの村には貯えがねぇ」 「そんじゃあ、このまま見ていろというのか。昨日は矢兵衛が死んだ。俺達だっていつ死ぬかわからねぇ」 「だいたい、薬師にかかったからって、どうにかなるとは限らん。隣のそのまた隣の村でずっと前に流行った病の話をきいたか。薬師は金だけとって原因はわからなかったって話だぁ」 「その村はいったいどうなったんだぁ」 「知らん。滅びたとも、少しは生き残ったとも」  議論は、平行線をたどった。  紛糾した議論は、意外な形で散会を迎える。 「た、大変だ!」  飛び込んできたのは、寄合に参加していない、村落では比較的若い者だった。 「いま忙しいのがわからねぇか。そいとも、誰ぞまた倒れたかぁ」 「ち、ちげぇんだ。いま、そこに旅の卜者がきてんだぁ」 「卜者ぁ?今卜者に用は無ぇ。必要なのは薬だぁ」 「それが、その卜者が、この村を救えるってぇ……」  村人たちは半信半疑だった。  それでも、他にすがるものがなかったからかもしれない。連れだって、その卜者のもとへ向かった。 「この村に、強いまじないの力を感じます」  集った村人たちの前で、卜者が一言目に口にしたのはそれだった。  卜者は透かして見たように今の村落の状態を次々に言い当てて見せた。  追い詰められた村人たちにとって、それは信用に十分足る言葉だった。 「あのぉ、この村から病から救う方法は、ねぇんでしょうか」  村長が卜者に尋ねる。  村人たちの救いを乞い求める目をひとしきり眺めてから、卜者はふわりと微笑むと、こう言い放った。 「この村には巫女の末裔がいます。とても強い力を持った、はるか昔、帝に寵愛を受けていた巫女の末裔です。その末裔の少女を穢れなく、汚れなく、人目に留まらぬようにしなさい。それで、この村のまじないは取り払われるでしょう」 「ありがとうございます!これでみんな救われます!そんで、その巫女の末裔っていうのはどこに……?」  卜者は少しの間、その目を閉じると、やがて一つの家を差した。
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