第二話

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真奈美の生まれも広島、それで育ちは東京。 荒川は生まれも育ちも東京。 「まぁいいや。店も暇だし、メシにしよう。なに食いたい?」 「はいは~い、モツ煮込みとサラダと白ごはんを」 「真奈美はそれでいいか。比奈は?」 「牛スジ」 訊かれた比奈はボソッと返した。 「へいへ……じゃない、はいよ」 荒川が厨房に入り、業務用の冷蔵庫を開けて料理の準備をしだす。 その様子を、比奈が変わらず無表情でビアンキの背中を撫でながら見ていると、真奈美が声をかける。 「比奈ちゃん、また白ごはん食べないの? それにいつも牛スジじゃない。野菜も食べよう」 「そういう真奈美はいつもモツじゃないのよ」 「あたしは禁菓(お菓子を禁止している) してるからいいの。モツまでやめれますかって」 「禁菓ってなに……? 新しい言葉を作るんじゃあない」 二人がそんな話をしていると、荒川がブツブツとなにか言っている。 「どうしたんですか? 荒川さん?」 「いや、仕込んでおいた牛スジが無くなっているんだよ。たしかここに入れて置いたんだけど、おかしいな」 比奈が訊き、荒川が答えると、真奈美が気まずそうに言う。 「もしかして、牛スジの材料はそこにしかなかったんですか……」 「まさかあんたっ!? ……ったくよぉ」     
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