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卒業後は都内の有名大学に入ったが、一年目に中退をして美容専門学校に入り、卒業後からここで働いているそうだ。
「はい。最近こっちに帰ってきたんです。今は郊外の方で定食屋やっていてそこに……伊月先輩は?」
「俺はここからすぐ近くのマンションで暮らしてるよ。家賃のわりに狭いけど、まぁ、職場が近いから」
「そうなんですね。ところで伊月先輩……美容師になったんですか?」
「見てわかるでしょ? よかったら店入ってよ。俺が担当するから」
比奈は久しぶりに会った先輩と話したくて、つい店に入っていってしまった。
店内は、美容院とは思えないナチュラルな雰囲気が広がっている。
圧迫感を感じさせない吹き抜け造りで、優しい木の暖色と混じりけのない白の清潔感で統一されていた。
他の客はそんな店に合わす様に、皆モデルでもやっていそうな流行のファッションと化粧姿。
比奈は自分の服を見て、少し恥ずかしくなっていた。
……完全に場違いだわ、あたし。
すっぴんで、白の7分袖Tシャツに下は黒のカーゴパンツで編み上げブーツ姿の比奈。
顔には出ていないが、とても申し訳ない気持ちになっていた。
「ここ座って」
そんな事を考えているとは知らずに、伊月は比奈を席に着かせた。
「比奈ちゃんの髪は変わらずきれいだよね」
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