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オープン当時の定食屋ビアンキの内装は無機質で殺風景な感じだった。
だが、真奈美がインテリアと言う名目で、店内のいたる所にグロテスクでいながら可愛いらしいぬいぐるみが置いてあるせいか、どことなくメルヘンチックな感じになっている。
「ただいま、ビアンキ」
比奈は、店内の隅で寝そべっている大きな黒猫に声をかけて近くに座った。
ビアンキと呼ばれた猫は、力なくノロノロと比奈の膝の上へ乗る。
「ビアンキ、すっかりお婆ちゃんになっちゃったですね」
真奈美が悲しそうに言った。
「元々捨て猫だったし、正確な年齢はわからないからな」
そういって両腕を組む荒川は、困った顔をしている。
ビアンキも不動産会社時代から三人といる巨漢黒猫。
ある日に荒川が拾って来て、それ以来職場である事務所で飼っていた。
そして、広島へ戻る時に連れてきて今は一緒に住んでいる。
比奈は、無表情のままビアンキの背中を撫でる。
「やはり平日はお客さん来ないですね」
店内を見ながら比奈が言った。
「まぁ、こんな田舎じゃ景気もよくないだろうしな」
「あっ! 荒川さんったら、今広島をバカにしたでしょ!」
「してねぇよ。田舎って言っただけだろう。ったく、真奈美はそんなに地元が好きなのかよ」
比奈の生まれは広島で高校までいた。
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