第2話

眠れる森の魔王（びじょ）

大陸歴４３８年霧の月七日・ヴァイスブルクの森

逃避行の最中に見付けた洞窟、降り始めた雨を凌ぐためにその中へと入ったミリアリアが魔力の明かりを灯して周囲を見渡すとその内部は洞窟にしては不自然な程に滑らかな岩肌と凹凸が少なく歩き易そうな平坦な地面と言う自然が造り上げたにしては明らかに異質で不自然な物であった。
「……この洞窟、自然に出来た物では無いな」
洞窟内部の様子を目にしたミリアリアはそう呟くと洞窟から出る為に直ぐに踵を返したが、転じた視線の先には先程入った筈の洞窟の入口の代わりに滑らかで凹凸の少ない岩壁が鎮座しており、それを確認したミリアリアは小さく舌打ちしながら顔をしかめたが直ぐにその表情に諦念の色が浮かんだ。
「……進むしか無い、な、例えこの洞窟から出られたとしても、今更当て等無いのだからな」
そう呟き腹を括ったミリアリアは洞窟の奥へと進め始め、かなりの時間歩き続けた後に開けた空間へと到着した。
「……此処は、墓場、なのか？」
到着した空間の中央には石棺が１つ鎮座しており、その光景を目にしたミリアリアは訝しげに呟きながら石棺の所に近付いて石棺の様子を調べ始めた。
石棺には魔方陣の様な物が記されていた為にミリアリアはその内容を確認しようとしたが、記された年代が著しく古いと推測される上に記されている魔文字もかなり複雑な物であった為に記されている魔文字の大半は判読不能若しくは困難な物であり、ミリアリアは暫く苦労してそれらを判読した末にこの魔方陣をかなりの量の魔力を流す事で石棺の蓋を開閉する（恐らくは盗掘予防の為）為の魔方陣であろうと推察し、その上で石棺に向けて語りかけた。
「もしこの中で眠りについている者がいたとしたら、この蓋を開き、その永き眠りを妨げてしまう事になる事を許して欲しい、もう、私には前に進むしか無い、その為には墓荒らしの真似事をしてでも何かを掴み取るしかないのだ、だからこの棺を暴かせてもらう、もし、この中に何も無く、ここから出られる当ても無ければ私もこの地にて永久の眠りにつく事になるだろう、勝手な話である事は重々承知しているがどうか許して欲しい、それでは、この蓋を開けさせて貰うぞ」