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ミリアリアは棺に向けて語りかけた後に魔方陣に右手を添えながら意識を集中させて魔方陣に魔力を流し込み、流し込まれた魔力に呼応した魔方陣が淡い輝きを放った後に微かな軋み音をたてながら石棺の蓋がスライドし始めた。
逃避行によって消耗していた所に更に大量の魔力を放出した為にミリアリアは一瞬立ち眩みを起こしてしまったが、数歩後ずさる事で何とか転倒を防ぎ、朦朧としかけた意識を覚醒させる為に軽く頭を振った後に石棺の中を覗き込んだが、その中にはミイラや骸骨の代わりに美しい女性が仰向けに横たわっており、ミリアリアはその美しさに思わず息を呑んだ。
艶やかなストレートロングの濡羽色の髪に丹念に彫り込まれた彫刻の様に整った面持ちに豊かに隆起する柔らかな双丘と締まった腰回りにスラリとした手足、美しさと色香が混在する肢体を惜し気もなく露にさせる滑らかな黒の光沢を放つ扇情的な装い、見る者を劣情へと誘う蠱惑的な美女は目蓋を閉ざしたまま横たわり、ミリアリアは暫しその姿に見とれてしまっていたが、横たわる彼女の背中に折り畳まれた黒い蝙蝠の羽根が存在している事に気付いて蒼水晶の瞳を大きく見開いた。
「艶やかな黒髪、雪の様に白い肌、そして背中に存在する黒き蝙蝠の羽根……まさか、魔王?」
ミリアリアの言葉の中にあった魔王と言うのは膨大な魔力を持った魔物達の長の事であり、過去に幾度か現れては世界を混沌と破壊の渦へと巻き込んだ存在として恐れられていた存在であった。
伝承によるとその容姿は漆黒の黒髪に淡い瑠璃色の瞳と白雪の様に白い肌、そして背中から伸びる黒い蝙蝠の羽根となっており、今ミリアリアが見ている美女の外見は確かにその特徴に合致してはいたが、伝承で伝えられている魔王は全て男性となっていて女性の魔王の存在は与太噺の類にすら上っておらず、ミリアリアは戸惑いの表情を浮かべながら目の前に横たわる美女を見詰めていたが、暫くした後に躊躇い勝ちに横たわる美女へと顔を近付けた。
ミリアリアは美女に顔を近付けると口元に手を翳しながら豊かな双丘を一瞥したが翳した手には呼吸は感じられず、豊かな膨らみにも動きは見られなかった。
(髪や肌の色に蝙蝠の羽根、それらは確かに伝承にある魔王、それも絶大な力を持つ純正魔王の特徴と合致している、だが、女性の魔王等噂にすら聞いた事が無い、それに、最後の純正魔王が滅ぼされてから400年以上が経過している。
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