眠れる森の魔王(びじょ)

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その際に魔王の眷族も大多数が滅び、生き残り魔王を自称した一握りの眷属もおよそ300年前には滅ぼされた、魔王は最早過去の存在、それが常識だ、だが、今、私の前に横たわる彼女は確かに、魔王の特徴を備えている、一体どう言う事だ) 戸惑いと共に横たわる美女を見詰めるミリアリア、その時、閉じられている美女の目蓋が微かに身動いだ。 「……ッ!?」 ミリアリアが突然の事態に思わず息を呑んでいると、美女の目蓋は再び微かな身動ぎを始め、やがて閉ざされていた目蓋がゆっくりと開かれて澄んだ煌めきを放つ淡い瑠璃色の瞳が姿を表した。 (……淡い、瑠璃色の瞳やはり、純正魔王、なのか?) 美女の瞳を目にしたミリアリアは思わず身を固くさせたが、美女は目覚めたばかりの為かぼんやりとミリアリアを見詰め、ミリアリアは身体を硬直させたまま美女と見詰め合う事となった。 (……綺麗な瞳だな、吸い込まれてしまう様だ、捉えられてしまったのか……所詮敗残兵の私の運命はここまでだったと言う事かもしれないな) ミリアリアは美女の澄んだ瑠璃色の瞳を見詰めながら自分が危機的な状況にあるのを感じたが、今更慌てた所で状況が劇的に改善する筈も無く、達観したミリアリアは腹を括って美女を見詰めた。 ミリアリアが見詰めていると当初はぼんやりとしていた美女の瑠璃色の瞳はだんだんとはっきりし始め、美女はその瞳でミリアリアを見詰め返して来た。 美女の淡い瑠璃色の瞳とミリアリアの蒼水晶の瞳、共に澄んだ光を放つ美しい瞳は互いの姿を映し続け、ミリアリアが美女の美しくそれでいて官能的で蠱惑的な面立ちに改めて感嘆していると美女はミリアリアを見詰めたままゆっくりと口を開いた。 「……貴女が、あたしを目覚めさせてくれたのかしら?」 「特に貴女に何かをした、と言う訳では無い、だが、この石棺の蓋の魔方陣に魔力を流し込んで開けたのは確かに私だ」 美女に声をかけられたミリアリアは静かな口調で言葉を返し、それを聞いた美女は微かに笑いながらゆっくりと上体を起こした。 美女の行動によって扇情的な装いによって谷間が露になっている豊かな双丘が悩ましく揺れる中畳まれていた蝙蝠の羽根がゆっくりと大きく開き、ミリアリアはその羽根を見ながら上体を起こした美女に声をかけた。
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