眠れる森の魔王(びじょ)

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「……黒髪と瑠璃色の瞳に白い肌、そして背中の黒い蝙蝠の羽根、貴女は魔王、なのか?」 「……確かにそんな風に呼ぶ人もいたわね、そんな質問をするって事は、あたしの正体を知っててあたしの力を利用する為にあたしを目覚めさせたって訳じゃ無さそうね、エルフさん」 ミリアリアの言葉を受けた美女は頷きながら返答し、それを受けたミリアリアは乾いた笑みを浮かべながら言葉を続ける。 「……今の私は敗残兵でね、敗走の最中にこの洞窟を見つけ、入ったはいいが出られなくなった為に奥に進んでこの石棺を見つけ、勝手な話だが何か無いかと思って蓋を開けたんだ」 「……あら、だとしたら貴女は墓荒らしさんって事になっちゃうわね、しかも魔王の墓を荒らしちゃった」 ミリアリアの言葉を受けた美女は面白そうに頬を緩めながら告げ、ミリアリアは自嘲の笑みを浮かべて頷きながら言葉を返す。 「確かにそうなるな、いかに敗残の身で窮していたとは言え、墓を暴き、貴女の、魔王の眠りを妨げてしまった……とんでもない愚か者だな」 ミリアリアは自嘲気味に笑いながら呟き、美女はそんな彼女を面白そうに見詰め、呟きが終わった後に口を開いた。 「……面白いわ、貴女みたいな人に目覚めさせて貰うなんてね、ねえ、貴女の名前を聞かせて頂戴、エルフの墓荒らしさん」 「……私はミリアリア・フォン・ブラウワルト、かってはヴァイスブルク伯国の第三騎士団長をしていた、が、今は単なる敗残兵で墓荒らしに過ぎない」 美女に問いかけられたミリアリアは静かな口調で己の名を告げ、それを受けた美女は蠱惑の笑みを浮かべながら口を開く。 「そう、それじゃあ改めてはじめましてミリアリア・フォン・ブラウワルト、あたしの名はアイリス、貴女達の言葉で言うならば魔王って奴になるわ」 美女、魔王アイリスは蠱惑の笑みと共に己の名を告げ、ミリアリアは改めて告げられた魔王と言う名に己の身体が強張るのを感じながら頷いた。 ミリアリアが魔王アイリスとの出逢いを果たした頃、アイリスが眠っていた洞窟に程近い場所ではロジナ候国軍の残党狩部隊の一部が降り始めた雨を避ける為にテントを張って宿営の準備を進めていた。
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