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花火までには、まだ間がある。
一旦三好屋の二階に上がって休息し、夜を待って今度は屋根船で大川へと乗り出すのだ。
出された饅頭を頬張っていたら、
「お嬢さん。船酔いするといけませんから、ほどほどにお上がりなさいましよ」
なんて、すっかり顔なじみの古参の女中さんに注意をされたけれど、もうそんな子どもじゃありませんっての。
そのうち、次々にお店の取引先の小父さん方がやって来て、お父っつあんもおっ母さんも、女中さん達も皆ざわざわと忙しくなり、お絹は放って置かれる。
これも毎年のことで、別に構やしない。
お絹は、なんとなく気もそぞろにそわそわと辺りを見回していた。
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