9人が本棚に入れています
本棚に追加
思えば今までは、春の陽だまりだったのだと思う。
毎年この日に会えると思えば、それだけで嬉しくて、楽しくて、ほっこりと暖かかった。
だけど、だけど……
会えないと分かった途端に胸を刺すこの痛みは何だろう。
寂しくて、悲しくて――真夏の灼熱の日射しのように、じりじりと胸が焼ける。
折角、もう子どもなんかじゃないってとこ、見せてあげようと思ったのにさ。
お絹は、これまで夏が一番好きだった。
梅雨が明けて、青い空が広がって、お天道様は眩しくて、煩いくらいに蝉が鳴いて……夜になっても人の声がさざめいて、空に大輪の花が咲く。
なんだか、生きてるっていう気がするじゃない?
だけど、だけど、だけど……
こんなに詰まらない夏は、はじめてだ。
花火も、すっかり色褪せて見えた。
最初のコメントを投稿しよう!