第一章(2/6) 曖昧なボーダー:水沢日和

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「似ているなあ」  ドアを後ろ手で閉めながら、さっき漏れてしまった言葉を、もう一回呟いてみた。 「あ、お姉ちゃん、おかえりー」  ビクッとして前を見るとリビングから出てきたところのひなたちゃんがいた。  日焼けでちょっと茶色くなった短い髪をうなじのあたりで結んで、肩にタオルをかけて、スポドリを飲んでる。  今の独り言は聞かれてなかったみたい。良かった。  小動物みたいな顔でひなたちゃんがこちらを見ている。  姉バカかもしれないけど、ひなたちゃんはすごく可愛い。  小麦色の肌が健康的に汗をはじいて、グレーのTシャツの首元は汗じみでちょっと黒くなってる。  ザ・スポーツ少女という感じ。  うん、可愛い。 「ひなたちゃん、ランニング帰り?」 「そー。シャワー浴びるー」  ひなたちゃんは陸上部で短距離走をやっているらしい。  なかなか速いみたいで、うちのリビングのタンスの上には中三の大会でもらった賞状も飾ってある。  私はといえば、中高時代はなんとなく美術部に所属して、大した賞を取ったりすることもなく6年を終えた。  あの時以来、絵は書いていない。  私はインドア派、ひなたちゃんはアウトドア派、と、姉妹で綺麗に趣味のタイプが分かれたなあ、と思う。
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