第一章(2/6) 曖昧なボーダー:水沢日和

3/9
51人が本棚に入れています
本棚に追加
/211ページ
 ひなたちゃんは玄関の前を通って浴室の方に向かう。  私も靴を脱いで手洗いうがいをしに、浴室の横にある洗面所に向かう。 「そういえば、ひなたちゃん、受験とかってどうなってるの?」 「えー、まだ二年生だもん」  洗面所で服を脱ぎながらひなたちゃんが答える。  私は手を洗いながら、 「青葉くんは、図書室で勉強してたよ」  と言ってみる。  その瞬間。  鏡の中、浴室のドアを開けようとしたひなたちゃんの動きがいきなり止まる。 「お姉ちゃん、今日、青葉に会ったの?」 「え、うん。一緒に帰ってきたよ」  ひなた、相変わらず同じ姿勢。  日焼けあとが綺麗ねえ、とおじさんかおばさんみたいなことを思った。 「あ、え、一緒に帰って来たの? 今?」 「うん、そうだけど?」  ひなたちゃんは、まだ同じ姿勢でこっちを見ている。  アーモンドみたいにつぶらな瞳。その目をなんか泳がせはじめた。 「へー、じゃあ、すれ違い? ニアミス? なんだっけ、そういうようなやつだね! お姉ちゃんと私!」  たははー、とか言ってる私の妹。  いや可愛いから良いんだけど、それは青葉くん関係なく私が帰って来た瞬間にわかってたよね。  っていうか、何がそんなに気になるのか知らないけど、 「全裸のひなたちゃん、とりあえずシャワー浴びたら?」
/211ページ

最初のコメントを投稿しよう!