第一章(2/6) 曖昧なボーダー:水沢日和

4/9
51人が本棚に入れています
本棚に追加
/211ページ
 手を洗い終わった私はリビングに向かい、作り置きのアイスコーヒーを氷でいっぱいのグラスに注ぐ。  このアイスコーヒーはコールドブリューとかっていって、挽いた豆を水に8時間くらい浸けて置くと出来上がるという、ニューヨークで流行中のおしゃれアイスコーヒーなのだ。  おしゃれな雑誌に書いてあったので、我が家でも導入しようと思い、やってみている。  お母さんは「ああ、水出し珈琲ね」と言っていた。  その言い方は、おしゃれじゃない。  一口、ブラックのまま飲んでみたけど、やっぱり苦いので飲んだ分くらいの牛乳を入れた。  こうするとギリギリ飲める。  やっぱりまだ舌は子供だなあ、私。  コーヒーを飲みながら、先ほどの光景を思い出していた。  映画監督になりたい、と言った時の青葉くんが、あの人に重なった。
/211ページ

最初のコメントを投稿しよう!