第一章(2/6) 曖昧なボーダー:水沢日和

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「ふー、さっぱりした!」  タンクトップとショートパンツでひなたちゃんがリビングに出て来た。  太陽の妖精みたいにまぶしい。  可愛い妹に喜んでもらいたくて、牛乳を注いであげた。 「ありがとーお姉ちゃん」  ググっと飲み干して、ぷはーっとやっている。  口の周りに泡ヒゲでもつけてそうだけど、これは牛乳だからつかない。 「でさー、」  わざとらしく窓の外の夕日を見ながらひなたちゃんが言う。 「青葉、もう勉強してるって?」  この子、分かりやすいにもほどがあるな……。 「そう、塾に行ってるみたいだよ。あの、陸上部の奈良くん? って子と一緒に」  気づかないふりをして答える。 「あ、奈良ね。それで、元気にしてた? 青葉」  って、奈良くんの扱い!  奈良くんは結構ひなたちゃんの話出た時嬉しそうだったよ!  というツッコミは心の中にとどめ、冷静に返事をする。 「うん、元気だったよ。というか、ひなたちゃんは同じ高校なんだからわかるでしょ?」 「いや、今夏休みだから最近全然会ってないし」  いや、知ってるけど、まだ7月じゃないですか。  あなた終業式したのまだ先週じゃないですか。  時の経つ速度は、年が4つ違うだけで、こうも違うものでしょうか……。  よし、ちょっと意地悪してみよう。 「そっかそっか。なーんか、青葉くん大人っぽくなったね。私を歩道側にやって、車道側歩いてたよ」 「はぇ!? それ、うちが教えたキュンテクじゃん。なにお姉ちゃんなんかに使ってんだアイツ......」  ひなたちゃんはぶつぶつ言ってらっしゃる。  そうか、ひなたちゃんが教えたのか。  ていうか、キュンテクって。お姉ちゃんなんかって。  まあ言いたいことはわかるけど。 「でも、そっか」 「ん?」 「ひなたちゃん、いつから青葉くんのことが好きなの?」 「えぇっ!?」  ひなたが激しくむせている。わかりやすい。 「いや、そんなんじゃない、違う違う!」  むせながら、顔を赤くして否定する。  そのまませき込んでしまったので、背中をさすってあげた。  ちょっと落ち着いたっぽい。
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