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「あのね」
「んー?」
ひなたちゃんが咳払いをする。
座り直して、ちゃんと何かを話そうとするので聞くことにした。
もしかしたら、口角は緩んでるかも知れないけど。
「クラスの友達で、吉野夏織ってのがいるんだけど、その子が青葉を好きなんだよね。この間なんか、『ひなたと西山くんって付き合ってんの?』なんて言われてさ。それから、青葉に悪い虫が付かないように見張る立場になっちゃったっていうか。なんていうか、それだけだよ。あ、もちろん、お姉ちゃんが悪い虫って言ってるわけじゃなくてね」
あらまあ。それは何というか、ありがちな......。
よしのちゃんって子はひなたちゃんを牽制しているのかな。マーキングとも言う?
女子高生の、怖い世界だ。
「なんというか、あれだけど。ひなたちゃん、頑張ってね」
「いや、私は支えるだけっていうか、別に頑張るようなことじゃないんだけど。友達は、絶対大切にしなきゃ、だから」
『友達は、絶対大切にしなきゃ』ひなたちゃんの口癖だ。
困ったことに、こういう時のひなたちゃんは本当に自覚がない。
とぼけているわけでもなんでもなくて、自分は恋なんてしていないと本当に思っているんだと思う。
「ひなたちゃん」
なんだか言い訳みたいにブツブツ言っているひなたちゃんに向き直っていう。
「うやむやにして、後悔、しないようにね」
誰に言ってるんだろうな、と思いながら。
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