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早く雨がやまないもんかな、と、階段の上で壁に寄りかかって考えていたおれの足元に、天窓からオレンジ色の陽が差してくる。
まごついているうちに、雨が通り過ぎたみたいだった。
次の電車がちょうど着いたところみたいで、まばらに乗客が降りてくる。
ラッキーな人たちだな、と思う。
もう、日和もいなくなっただろう。
おれも帰ろう。
弾みをつけて壁から身体を離し、歩き出そうとしたところ、
「阿賀さん?」
日和に似た声が俺を呼んだ。
ビクッとして振り返ると、改札から出てきたのだろう、日和の妹のひなたちゃんがいた。
デートのために日和を家まで迎えに行った時に、何回か、挨拶をしたことがある。
すごくほがらかな子だった。
最後に会った時は、中学生だったかな。
初めて行った時にはなんだかジロジロ見られて、
「阿賀さんてうちが小学二年生の時、中学生だったりしますか?」
と聞かれた。
計算するとギリギリ中学三年生だったのでそう答えたら、
「そうですか」
と、すごく嬉しそうにしていたのが印象的だった。
あれは、どういう意味だったんだろう。
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