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水沢は、なんだか怒ってる。
「吉野ごめん、って、吉野って夏織? 夏織に何かしたの?」
はあ、怒ってるのは、そういうことか。
じーっと睨まれる。
睨まれてること自体ではなく、水沢と目が合うのはすげえ焦る。
おれは目をそらして、しどろもどろになりながら、
「いや、なんもしてない。ちょっと吉野に悪い想像をしちゃっただけで……」
「悪い想像!?」
水沢が机をバンッと叩いて立ち上がる。
「そりゃ夏織は可愛いし夏織を好きになるのは仕方ないけど、変な想像しないでよ! しかも図書館で……」
いや、ちょっとやめて水沢! 色々な意味で!
シーッ! と指を唇の前に置いて伝える。
「水沢こそ図書館では静かにしてよ! 違うんだよ、そういうんじゃないから。まじで信じて……」
コショコショ声かつ大声で伝える。
「ふーん、それならまあいいけど」
まだ訝しそうにしている。
水沢、機嫌悪くない?
「どうしたの? 図書館なんか来るの珍しいじゃん」
小声で聞いてみる。
「なんか最近、奈良とか青葉がここで勉強してるってこないだお姉ちゃんに聞いたから。いるかなー、と思って」
ん? じゃあ会いに来たのか?
……おれに? にしやんに?
「にしやんなら、今日はいないけど」
「うんうん、ちょうどいい。ラッキーだよ」
え、じゃあ……。
「奈良に、ちょっと相談あってさ」
おれに、会いに来たんだ。
一瞬で心が軽快に踊り始める。顔がゆるむのを必死に抑える。
そんなおれとは対照的に、水沢はなんか神妙な顔をしている。
「なんか、悩み?」
「ちょっと、青葉には話せないことで……。聞いてくれる?」
いや、これは、あんまし喜べないパターンか?
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