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「あっつぅ……」  家路につきながら私は思わず呻いた。  今日は折角の日曜日なのに休日出勤、まあ代わりに明日が休みになるのだから文句はないけど。  冷房の利いた事務所から一歩外へと踏み出した瞬間、猛烈な湿度が熱波を伴って襲い掛かってきた。三歩も踏み出さない間に額から汗が噴き出してきた。  今年も夏が来た。それも例年にない図々しさで。  そう今年はとにかく異常な猛暑となっており、既に各地で観測史上最高温度を更新しているとか。  ただでさえ日本の夏は高温多湿の不快なものであり、その厳しさにはアフリカの人も音を上げるという。  そこにこの異常気象が重なっているのだ。既に日は暮れかかっているにもかかわらず一日たっぷりと太陽に加熱されたアスファルトから立ち上がるうだるような熱気が大気に渦巻いている。 「ぅう、この星はもしかして人類が生息するに適さない惑星なのかもしれない」  口をついて出たそんな戯言もきっと夏の暑さのせい。  アレは確かTVのCMだったか「貴方はどんな道が好きですか?」というフレーズが流行った事があった。  私が好きな道は帰り道である。     
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