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一日、学校だったり仕事だったり、様々な役目を果たして気怠い疲労感に苛まれながら今日の夕ご飯や家での寛ぎに想いを馳せるこの時間が好きだった。
「無理、暑すぎる、なんにも考えらんない。死ぬ」
溜息を洩らし顔を俯かせると、頭皮がかいた汗が額を伝って降りてきて眉毛を抜けて目に入った。ハンカチでぬぐってもすぐに額に汗が滲む。
果たしてここは本当に陸なのだろうか?私が吸っているこの大気は実は人肌の粘水なのではないだろうか?地球温暖化というし実は地上波すでに水没してしまったのではないだろうか。
そんな益体のない妄想さえ浮き上がってくる始末である。
噴き出した汗で服が張り付いてきて一層ストレスと不快感を助長する。
「あついー」
自然現象に文句を言っても仕方がないのだろうが口をついて出る悪態を喘ぎながら家路を急いだ。いや、走る気力もないのだけれども。
「誰もいないけどただいまー」
途中に寄ったスーパーマーケットで涼を取る事は出来たが所詮は一時しのぎ。買い物を終えてしまえばまた逃れぬ暑気に蹂躙された。
とはいえ私はようやく愛しき我が家に帰ることが出来たのだった。職場から三十分ほどの安アパート。事故物件らしく家賃は安かった。何でも鬱を拗らせた母子家庭のお母さんが首を括ったとか。まあ生来、信心薄い性質なのであまり気にしないが。
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