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「そうなっちまったのは、俺の所為なんだろ?最低なのは俺だろ。『資格』がどうってんなら、それこそお前にツラ見せる資格なんかねーかも知んねえ。けど、それでも俺は」
理央を腕に閉じ込め、感情のままに言葉をぶつける。
兄貴の事とか今までの互いの行動とか、罪悪感とか嫉妬とか。バカな頭でどれだけ考えたってまともな答えが出る筈も無い。
だったら頭で考える前に口にする方がよっぽど素直に伝わる筈。
「お前がどう変わってようが、誰のもんだろうが好きだって気持ちは変わんねーんだよ。『資格』とかんなモンどうでもいい。嫌いとか、兄貴の方が好きってんならそれで構わねえ。お前の正直な気持ちだけ教えてくれ」
あの頃のように勝手な欲を押し付けて傷付けたりはもう絶対にしない。
兄貴が好きだって云うなら、俺が嫌になったってんなら綺麗さっぱり諦める。
けどお前の気持ちがまだ俺にあるなら、今度こそ諦めたりはしない。
兄貴に恨まれたって嫌われたって、縁を切られたって構わない。
もう二度と間違えない。
だから。
「理央」
抱き込んだ体がびくりと跳ねた。
そして観念したように長い息を吐いて、胸元でくぐもった声を漏らす。
「───……き…」
「理央?」
「……っ、好きだよっ、今でも誠司が好きだっ!どんなに忘れようとしたって、誰を相手したって、いち兄がどれだけ優しくしてくれたって、誠司を忘れられない……っ」
その答えだけで、充分だよな……?
また涙で濡れた顔を上向かせて。
噛み付くように唇を重ねた。
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