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「君、ちょっと待ちたまえ!『ムダ』とは何だ!『ムダ』とは!
世界中の科学者達が力を合わせて頑張っているというのに、そんな言い方は失礼じゃないか!」
アメリカ人科学者のボブさんが金髪の頭をかきむしりながら、興奮した様子で立ち上がりました。
スクリーンにボブさんの言葉が映し出されると、場内からは賛同の拍手が沸き起こります。
すると今度は、フランス人科学者のフランソワ氏が立ち上がりました。
「えー、みなさま、細かい言い方の問題はさておき、そもそもわが国では、この計画自体に初めから無理があると考えておりました」
フランソワ氏は分厚いメガネを取り出すと、あらかじめ用意していたメモを読みはじめました。
「思い起こせば、この《セカンド・シー研究所》は環境破壊が増大し、海洋生物の絶滅が確認された2020年、世界中の協力の下に立ち上げられました」
「その目的は、死の世界となった海を再び魚たちが住む事のできる《母なる海》へと蘇らせること。
けれどもみなさま、そんな都合のいい話が本当に実現可能だとお思いでしょうか?」
科学者たちは黙ってフランソワ氏の言葉に耳を傾けています。
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