『選考会ノ夜』

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『選考会ノ夜』

「では、以上の三作品が最終候補ということでよろしいでしょうか?」 神位(かみい)タカシは座卓を取り囲む三人の選考員に同意を求めた。 「異議のある方はいらっしゃいませんね?」 選考員達の顔を見渡しながら、一人ずつ念を押していく。 その顔は初老の紳士そのものだ。 だが、神位の力強い目で見られると、若い編集者なんかは、皆ヘビに睨まれたカエルのように縮こまってしまうという。 この目力こそが神位が、長年に亘って『文芸戦国』の編集長として君臨してきた所以でもあった。 三人の同意を確かめた神位が満足げに言う。 「ということで、地頭マサルさん、手代木ユミさんはここで落選となります。 それでは、引き続き残った三作品の中から受賞作を決めていきたいと思います」 神位の言葉に応えるかのように、選考員達の表情が少し和らいだ。     
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