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あの汚い部屋に鍋があること自体信じられなかったが、あると言ってるのだからあるのだろう。
白菜に長ネギ、豆腐、それから肉を何種類か、後は鍋の汁を買った。
おっさんが、ビールを買う時に糖質オフの銘柄のビールにするか真剣に悩んでいて少し笑った。
「お前も飲むか?」
聞かれて頷く。
350の6本入りを俺の持っていた買い物かごに入れた。
支払はきっちり折半だった。
丁度レジ袋2つになって一人ひとつずつ持って、寺井さんのアパートに向かった。
相変わらずの汚い部屋で男二人並んで、準備した不格好な形の野菜と豆腐は、少し大きめの片手鍋に納まった。
せめて両手鍋だろうと思わないこともなかったが、炬燵の上でぐつぐつと煮込まれる肉はとても美味しそうだった。
「はい、かんぱーい。」
飲む前から、何故か上機嫌なおっさんがプルタブを開けた缶を差し出すのでそれに自分のビールをカチリと当てた。
各自適当によそって鍋を食べながらビールを流し込む。
大学の男友達ともやったことのある、普通の食事だ。
でも、初めて寺井さんと食べたまともな食事だった。
「若いんだからどんどん食えよ。」
アルコールで少し赤くなった顔をして寺井さんが言う。
もくもくと食べていると、寺井さんは、持っていた煙草を取り出してライターで火をつけた。
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