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みぞれはやがて雪になる
大体、ワンルームの台所というのは狭いのだ。
男二人が並ぶと肩が当たる程度には。
「こんなもん、適当に切っときゃいいんだよ。」
白菜をめちゃくちゃな大きさに切りながら、おっさんは言う。
大学が終わり、みぞれになった灰色の空を傘のを通して見上げた。
みぞれは、雪を溶かして、足元はぐちゃぐちゃだ。
帰り道、何度かおっさんこと寺井さんに会った自動販売機のところに寺井さんはいた。
今は深夜でもないし、雪は降ってもいないし積もってもいない。
「よお。」
おっさんは片手を上げた。
思わず訝し気な顔をしてしまったと思う。
「鍋しようぜ、鍋。」
俺の表情に気が付いた様子も無く、そう言ってきた。
何か理由があるのかと思ったがそういう訳では無さそうで、そもそも具材になりそうなものが何もないということで二人でスーパーに行った。
前に行ったことのある寺井さんのうちは狭くて汚かった。
あの部屋に土鍋とコンロがあるのか不安でならなかったが、本人に聞くとコンロはあるとのことだった。
鍋は、どうするのか。当たり前の質問をすると、別に普通の金属鍋でいいだろうという事だった。
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