勇者LV.3

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 さらに、タイミングよく鉄球も飛んでくる。  鉄球攻撃は、かすっただけでも、ダメージの大きな攻撃だが、一番いやなのは耳障りな鳴き声だ。 「ウキィウキャァ、オホッホー!」  テンションの高い高音の鳴き声が坑道内に響きわたる。  耳の奥に投げ込まれる大音量のギザギザした波。  相当な音痴で有名な妹、アリエストの歌より酷い。  あの子の歌は母親譲りで、それはもう酷い物だ。  喋ってる声は綺麗で可愛いのに、なんで歌はデスボイスなんだろう。  僕は覚えていないけど、母の子守唄をずっと聞かされていたから、ああなったとか、そもそも呪われた子、なんじゃ無いかと、どうでも良い噂話も聞いたっけ。  ほい、ボクサー猿の動きは見切った。  距離を保ちつつ牽制の連打、間合いが詰まれば強烈な右アッパーかフック。  当たると痛そうだけど、眠気があってもかわせる。  フェイントでボクサーの足を止めた。  体を右にずらし、一瞬止まって隙を作る。  次の瞬間、猿の頭がはじけ飛んだ。  と同時に悲鳴に似た鳴き声が響く。
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