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収穫を終えて一息ついている間に、マルテイシアは、長い詠唱を唱えていた。
複雑な呪文に優雅な身振り手振り。僕がもし、その魔法を覚えたとしても、それを使用する事は不可能なそれを、なんなく行使している。
彼女が街道に向けて両手をかざすと、地面全体の光量が増し、一瞬重力が増した。
「これで、数日は持つと思います。後は専門家に任せましょう」
「は、はあ…‥‥」
妹が使う保護魔法系の物だと思う。
魔物の通行を妨げるシールドのような魔法。公的な魔導士が、公共性の高い街道等に施している術で、まあ虫除けみたいな技だ。常軌を逸した魔物には効かないが、先程のゾンビ軍団くらいなら、街道を認識する事が出来なくなる。
目視できる街道全域を保護したその能力は、通常考えられない。
「では、参りましょう」
疲れた様子もなく、華麗に馬に乗る。
僕は不覚にも、ほんの一瞬、見とれてしまった。
マルテイシアは、馬上でも様になっていた。その後に申し訳なさそうに付き従い、馬を走らせる。兜から香るのはローズか何かの良い匂い。何処までも、僕と違った、お洒落な勇者だ。
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