勇者LV.2

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 彼女が荷物をこねくり回している間、魚の焼け具合を見守る。 「あったー」  子供が、誕生日プレゼントに、大きなお人形さんを買って貰った時のように、喜ぶ悲鳴が聞こえる。どんどんイメージが崩れてゆく彼女だが、その方が接しやすい。 「どうぞ」  渡されたのは、これまたピンクの岩塩だった。持ち運びには粉ではなく、岩塩の方が良いかも知れないが、無駄に大きい。小顔な女子より少し小さいくらいだが、凶器で使えるレベルの大きさ。  これを少々砕いて、魚に振りかける。  焼く前に塩を振った方が良かったのだが、焼く前には、そこまでコミュニケーションを取れる自信がなかった。つまり、この休息中に僕は、コミュ力が上がったんだ。頭の中でレベルアップ音はしないけど、そう思う。 「いい香りですね」  もう、彼女の声は、低くなくなっている。たぶん素の声だと思う綺麗な声。どこかで聞いた声と似ているが、今は思い出せない。 「もう直ぐ食べられますよ」  火力強めだから、少々焦げ目は付いた感じで焼きあがりそう。でも、ほろ苦さは、若者が成長する為にに必須な要な経験値。苦過ぎる経験は黒歴史として永久凍結すればいい。  川魚でも新鮮だから生食いでも良かったのだけど、念の為に焼いた。  腹痛は、もう勘弁願いたいからね。
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