勇者LV.3

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勇者LV.3

 午前中の乾燥しきった空気とはとは打って変わり、高湿度の生ぬるい空気を風を感じながら、目的地、クリスティニアン鉱山へ、馬を走らせる。  夕暮れまでにはまだ早いが、街道に影が降りてきた。  街道の終点に打たれる結界柱。これより先はモンスターが大腕を振って歩き回っている。脅威はモンスターだけとは限らないが、この柱の向こう側は善良な人間が存在すべき領域ではない。  結界柱から数十メートル先から、激しい傾斜の山道が始まる。  切り立った崖に作られたその山道は、道と言うにはあまりにも容赦ない。  地面こそ、土を固めて舗装はされているが、その幅は狭く、調子に乗って、山道からはみ出ようものなら、崖下真っ逆さま。岩肌に体を叩き付けて幾つか関節が増えた上で、絶命は免れない。  目的のモンスターが現れる鉱山入り口は、山の中腹。自ずと、標高500メートル級の山登りを楽しむ事になる。  岩壁を直接上ると言う程の訳では無いが、山道の登山も難易度の高い行為ではある。  だが、残念な事に、勇者としての経験値が加算されることは無い。誰とも戦わずして、登山下山の繰り返しで、最強の俺、になれる都合の良いシステムにはなっていない。  そもそも、不眠不休で登山を繰り返す程の、根性が無いからね。
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