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サクッと言う音がしたかどうかは、分からないが、彼女の細身の剣が、先頭でいきり立つ大男の、腕の付け根に深々と刺さっている。
グリグリと、それを捻じる彼女の表情は、うかがい知る事は出来ないが、髭面男の血走った白目を見れば、その痛みがいかに悍ましい事であるかは、理解できる。
大の大人が大声を上げて泣いている。
部下らしい他の髭大男達は、一瞬どよめいたが、誰かが奇声を上げるのを合図に、全員武器を、大きく振りかぶった。
彼女目掛けて一斉に、鉄の塊を振り下ろす。
舗装された、山道が激しく飛び散る。
もちろん彼女は、その場にいない。
暗い空に眩い光。彼女の鎧が輝いている。
軽量鎧とは言え、鋼鉄の塊。その重量は、彼女本体より重い筈。
にもかかわらず、あの跳躍。
魔法で強化しているとは思うが、それにしてもありえない。
金属の断裂音が何度か響いた。
四人の大男が、破壊された武器を手から離した。
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