勇者LV.3

4/152

97人が本棚に入れています
本棚に追加
/228ページ
 サクッと言う音がしたかどうかは、分からないが、彼女の細身の剣が、先頭でいきり立つ大男の、腕の付け根に深々と刺さっている。  グリグリと、それを捻じる彼女の表情は、うかがい知る事は出来ないが、髭面男の血走った白目を見れば、その痛みがいかに悍ましい事であるかは、理解できる。  大の大人が大声を上げて泣いている。  部下らしい他の髭大男達は、一瞬どよめいたが、誰かが奇声を上げるのを合図に、全員武器を、大きく振りかぶった。  彼女目掛けて一斉に、鉄の塊を振り下ろす。  舗装された、山道が激しく飛び散る。  もちろん彼女は、その場にいない。  暗い空に眩い光。彼女の鎧が輝いている。  軽量鎧とは言え、鋼鉄の塊。その重量は、彼女本体より重い筈。  にもかかわらず、あの跳躍。  魔法で強化しているとは思うが、それにしてもありえない。  金属の断裂音が何度か響いた。  四人の大男が、破壊された武器を手から離した。
/228ページ

最初のコメントを投稿しよう!

97人が本棚に入れています
本棚に追加